熱き闘いの系譜
〜南関東三歳牡馬クラシックを振り返る〜
 大幅な見直しがあった今年のクラシック三冠。東京王冠賞が廃止され、新たに交流重賞JDDを加えた<羽田盃〜東京ダービー〜ジャパンダートダービー>という新体系によって施行された。粒揃いといわれた川崎の雄たちが激戦に挑み、そして暴れまくってくれた。その熱き戦いの系譜を辿っていこう

<羽田盃 4月25日/大井競馬場/1790m>

 第一冠目となる羽田盃をプリンシパルリバーが制した時点では、昨年のトーシンブリザードのように一頭抜けた存在として君臨するのでは、と誰もが思った事だろう。しかし続く2走はともに3着と勝利に届かず今後に課題を残す形となった。パドックを見ていつも感じる気性面での成長が鍵だろうか。
 4頭が参戦した川崎勢はエスプリシーズ(武井厩舎)の4着が最高位、5着のジェネスアリダー(八木喜厩舎)と2頭が掲示板に載ったものの、トキノアジュデイ(長谷川蓮厩舎)の9着、タヤスエイト(八木仁厩舎)の11着とともにファンの期待が大きかっただけに惜しい結果と言わざるを得ないであろう。

<東京ダービー 5月30日/大井競馬場/2000m>

羽田盃に参戦した川崎勢は揃って東京ダービーに駒を進めた。エスプリシーズにとっては厳しいレースとなってしまった。太めの馬体を気にしてかゲート入を嫌い、道中は他馬との接触も重なって9着に敗れた。その後同馬はジャパンダートダービーに登録するも骨溜を理由に参戦を自重した。よってリベンジは秋に持ち越されたわけだがファンも多いエスプリシーズの今後の活躍に期待したい。同じくアクシデントに遭ってしまったトキノアジュデイも精彩を欠いて14着と前走よりも着順を下げてしまった。しかしその一方で、第48代東京ダービー馬が川崎勢から誕生した。
 キングセイバー(八木仁厩舎)は陣営が同馬の入厩前から狙いをダービーに定めてローテーションを決め、前走5月1日のクラウンカップでの重賞勝ちを弾みに本番である東京ダービーをも制した。キングセイバーの黒光りした馬体はナイター照明に映える酒井忍騎手のブルーの勝負服とともに今もまぶたに焼き付いて離れない。同馬は僚友タヤスエイトとともに早々に休養に出され、現在は悠々と夏休みを満喫中である。
 ジェネスアリダーはそのキングセイバーと直線壮絶な叩き合いの末、ハナ差の2着に惜敗、しかし川崎勢のワンツーフィニッシュという快挙の片棒を担って三冠最後の一冠を狙ってジャパンダートダービーに駒を進めた。

<ジャパンダートダービー 7月4日/大井競馬場/2000m>

 三冠の最終レースとなるジャパンダートダービーに出走した川崎勢は3頭、前走6月18日の東京プリンセス賞を制したサルサクイーン(内田勝厩舎)は10着、クラウンカップ4着〜5月29日の若竹賞(大井)2着のコオテンスポット(八木仁厩舎)は不気味な存在だったが8着に敗れた。
 ただ一頭南関東三冠レース全てに出走を果たしたのがジェネスアリダー。今回も5着ながら掲示板圏内に粘り堅実さを見せた。必ず直線で「あわや」の良い脚を見せる点や3走無事参戦出来た強さも加味すると今後更に期待がかかる。すでに八木正喜調教師も「次走の黒潮盃では負けられない」と口にしている。
 レースは中央所属のゴールドアリュール(栗東 池江厩舎)が後続に7馬身をつけて逃げ切り、新たなダート王の座を予感させる圧勝劇で幕を閉じた。

 プリンシパルリバー、キングセイバー、ゴールドアリュールの三頭が一冠ずつを分け合う形となった今年のクラシック。三歳牡馬の頂点を決定する戦いには一旦終止符が打たれたが「どの馬がトップか」と問えば答えは容易ではなくレースごとにヒーローが生まれる目の離せない展開となった。今年の南関東三歳牡馬戦線。真の王座決定戦はこれからが本番かもしれない。

(2002/7−@月号)
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