女王の座をめぐる戦い2002
2002年7月-A号
       〜春の3歳牝馬クラシック戦線を振り返る〜
                   

4月から6月の3ヵ月に渡って繰り広げられる3歳牝馬のクラシック競走。その舞台となる競馬場も、戦う距離も各々異なる、厳しい条件下での戦いを強いられる春の三冠レースを振り返ろう。うら若き乙女の表情の中に女王の片鱗を見せたのは果たしてどの馬だったのか。

                サルサクイーンがプリンセス戴冠
第48回桜花賞 4月3日
<浦和1600m/晴 良>
道営からの転入組ラヴァリーフリッグが前走ローレル賞に続き連勝。終始レースを引っ張り、一番人気に応え一冠目を手中にした。牡馬戦線のプリンシパルリバー同様、3歳牝馬戦線も今後この馬が中心になるものと誰もが予想したことだろう。6番人気ながら2着に健闘したサルサクイーンは、最後方から徐々に差を詰め、4角から一気の差し脚は鮮やかだった。
第38回関東オークス  5月22日
<川崎2100m/晴 良>
指定交流レースである関東オークスは一番人気のサクラヴィクトリアが勝利。2番人気桜花賞馬のラヴァリーフリッグは3着に敗れた。人気の2頭に割って入ったのが12番人気のスターオブブリッジ。一着にクビ差に迫る切れ味を見せた。桜花賞2着のサルサクイーンは勝ち馬から1秒離された5着。8キロ減の馬体重が影響した。
第16回東京プリンセス賞  6月18日
<大井1790m/雨 不良>
大雨による悪天候のもとで行われた今年の東京プリンセス賞。嵐の予感か人気の一角、ラヴァリーフリッグが疝痛の為に出走を取消し、内枠に集まった粒ぞろいの川崎勢に俄然注目が集まった。皐月賞馬イシノサンデーの妹として、かねてから注目を集めていたイシノラピドは、前走地元の特別戦を勝って駒を進めてきた。サルサクイーンは桜花賞時の馬体重に戻しパドックでも好気配、3角から早くも仕掛けて来たイシノラピドと4角で並ぶと、直線はこの2頭の叩き合い。結果1/2馬身差でサルサクイーンが川崎勢はおろか3歳牝馬のトップの座を射止めた。
サルサクイーン
牝3 栗毛
1999年5月20日生
調教師★内田勝義
馬主 ★菅原広隆
騎手 ★的場文男
厩務員★林達也
生産者★高橋農場
<内田勝義調教師>

「道営でのデビュー戦の時計を見て、見た目以上に時計が出ているなという印象があった。ただうちに来たときからゲートが下手でね。桜花賞も出遅れて前を捕らえきれなかった。ここ2戦はやっとゲートに慣れてきたようで、大分良いスタートを切れるようになったよ。
 関東オークスは、いつもより強めの調教をしたことと、地元の輸送でさえも、体が減ってしまったのが痛かったね。輸送では10キロは減ることを想定しながら、調整している。馬運車に乗るときは何ともないんだけどね。
 東京プリンセス賞は状態も良かったけど、内からよく伸びた。狭いところを嫌がることなくがんばってくれた。3,4角の動きを見て、一瞬勝てるかなとも思ったけどゴールに入るまではわからなったよ。関東オークスでの負けがつながったのかもしれない。ただG1を獲れるまでに成長するとは正直思わなかったね。
カイ食いは心配いらないし、以前と比べて、腰幅が出てきたね。今のベスト体重は465〜470キロかな。性格はもともと大人しいけど大人になってきた。ゲートは何度も何度も繰り返し練習して大分良くなってきたよ。繰り返し練習させることで、怖くないと覚えさせるんだ。例えば人間が包丁を使うときも最初は、手を切りそうだと不安になるけど慣れてくれば千切りまで出来るようになる。何でもそうなんだよ。
馬の調子と相談しながらだけど、次走は、大井の黒潮盃(8月7日)を予定している。中間の稽古も順調に消化しているし、夏の暑さにも強く、悪いところは何もないよ。このまま順調に、ロジータ記念まで進みたいところだね」

<林達也厩務員>
  15歳で下乗りとして厩舎に入り、18歳で道営競馬から騎手デビュー。2000年8月に内田厩舎にやって来る前は、滋賀県にある育成場の厩舎長を務めていた育成のベテラン。「勉強する事はいっぱいある。上手な人、できる人の技を見て盗み、自分の物としていかなければならない。まだまだですよ」と研究熱心だ。
スタートは大分落ち着いてきたものの、レースでは必ずゲートに付き添っている。「ゲートで立つ素振りをするので、二人がかりで後ろから尾っぽを持つんですよ。尾っぽを後ろから強く引っ張ると、自然に頭が下がる格好になるでしょ。騎手が乗りながら尾っぽを上に引くのも、同じことです。二人がかりで引っ張り、ゲートが開く時のブザーが鳴った瞬間に手を放すんですよ」
東京プリンセス賞は、ゲートから戻ってくるバスの中からレースを見た。内から抜け出すのがわかった。「バスの中で思わず、交わせ!交わせ!と叫んでしまいました(笑)。この勝利はスタッフみんなが一丸となって手にしたもの」ゲートで苦労した時に協力してくれた厩舎スタッフ仲間への労いの言葉だ。

現在の担当馬 サルサクイーン (牝3歳・8月7日黒潮盃を予定)
アリオンカイザー(牡2歳・8月開催でデビュー予定 )
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