デビューから破竹の8連勝、数々の重賞レースを経て10月13日メイプルベガの舞台は中央のGVへ。府中牝馬ステークスへと向かった。川崎の新しいベガ、メイプルベガ(牝5・足立厩舎)はまだ開花したばかり。
馬主である節英司氏がメイプルベガに初めて出会ったのは生産者である川上悦夫氏の新冠の牧場でのこと。放牧地に放されていた4頭のサラブレッドの中で「一番スタイルの良かった」のがメイプルベガだったという。ひと気を感じて寄って来た馬たちが再び一斉に放牧地に散っていく姿。地を蹴って走るさまにトモの強靭さをも感じ取れた。現在の活躍は「当然の結果」と語る節氏の馬審眼が冴えた賜物と言えるであろう。期待を一身に受けたベガの中央に登録された当時の評価は「桜花賞候補」、誰が跨っても素質の高さを口にしたという。しかし骨瑠に悩まされ続けた。2000年6月未出走のまま中央登録を抹消、ギリギリのタイミングで登録が可能だった川崎に新天地を求め足立勝久厩舎に入厩、名前も新たに走り出す時に備えた。
デビューは2000年10月23日の「4才」戦、一番人気に応えての勝利。以後一ヶ月に一走ペースで着々と勝利の山を築くこと8勝。当時は500kgに手が届くほどの「太目のベガちゃん」だった。9戦目の青葉特別B3(2001年5月16日)ではコンマ1秒差で2着となり連勝街道にはピリオドを打ったものの10月13日現在で28戦15勝、着を外したのは僅か3回、しかもそのうち一戦は先の府中牝馬ステークス(中央GV・8着)という好成績である。今年に入ってからは特に牝馬の重賞には欠かせぬ存在。
鞍上は厩舎所属の岩城方元騎手、最近では金子正彦騎手も手綱を取る。二人の主戦ジョッキーにはこのところの惜敗続きを払拭する終いの切れ味を生かしてもらいたいところ。折りしも季節は秋、メイプルの季節である。 |
9連勝の約束は果たせず・・・
<足立勝久調教師>
馬主さんからの始めの指令、それは「9連勝して下さい」だったんですよ。(笑)8連勝はキリエキスパートで経験していましたが9つ勝つというのはなかなか難しいものですね。入厩後は脚元の不安も消え順調ですがまだこれからも良くなっていくでしょう。次走は大井のファーストレディー賞の予定です。
サラブレッド本来の美しさを持つ馬、それがベガ
<馬主・節英司氏>
ベガちゃん(節氏はメイプルベガをこう呼ぶ)は筋肉隆々の男勝りなタイプとは違ってスマートな牝馬。皮膚も薄く健康体。骨瑠の関係で遅いデビューになりましたが現在は自分で身体を作っているかのよう、きっと厩舎でも愛情を注がれているのでしょう。府中牝馬ステークス当日のパドックでも非常に見栄えがしましたね。初めての環境にも物怖じもせず逆にお客さんが大勢いて「あら、きれいなところだわ」という素振りにさえ映りました。レース自体は4角から直線に向いたところで差を詰めてきましたから頑張ったんじゃないですか。芝の適正?それは試す以前に確信していた点ですから。芝のレースはこれからも走るでしょう。来年も府中牝馬ステークスに向かいますよ。川崎のファンの方々にも応援して頂きたいですね。地元のレースがなかなかないですけど。
◆節英司(せつ えいじ)氏◆医療法人社団英会メイプル歯科診療所理事長
馬主だった父親に連れられて幼少期から馬を見て育つ。氏の語り口からは愛馬への愛情の深さとともに競馬会への熱心な理解者であることが伺える。
「厩舎はファミリー、調教師を中心に一丸となって取り組んで欲しい」
「その信頼を100%受けてレースに臨むのがジョッキー。特に所属の岩城騎手には頑張ってもらいたいね」厳しい言葉の端々に家族への思いに通ずる愛情が汲んでとれた一言だった。足立厩舎所属のメイプルカイドウ(牡4)、メイプルダンサー(牡3)、メイプルスピカ(牝2)、ラヴァリーブルート(牝3)も氏の所有馬である。 |
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