今は母として 〜ロジータ〜
<2001年12月号より>
  
  ロジータは母はとしても強かった――。昭和61年。新冠の高瀬牧場で生まれた一頭の牝馬。風のようにぴゅーっと速いことからビューちゃんと呼ばれた。「谷間の白百合」のロジータという名をあたえられ、川崎の福島幸三郎厩舎に入厩してわずか1年4ヶ月という短い競走馬生活の間に重賞8勝。並み居る男馬を相手に羽田盃、東京ダービー、東京王冠賞をかって三冠馬に輝いたばかりか、4歳(現3歳)にして東京大賞典という頂点に立った。明け5歳で川崎記念をも勝って最強牝馬の名をほしいままにした。

ロジータの牝系図
母メロウマダング(1981鹿マダング)南関東4戦3勝

  タカノオーカン(1985牡鹿キングオブダービー)
         南関東18戦5勝
  ロジータ(1986鹿ミルジヨージ)
          中央2戦0勝、南関東13戦10勝
      シスターソノ(1991牝黒鹿ナスルエルアラブ)
           中央10戦2勝
         イブキコマンダー(1996牡鹿コマンダーインチーフ
             現役28戦3勝
         レギュラーメンバー(1997牡黒鹿コマンダーインチーフ)
             現役,17戦6勝
             JBCクラシック、川崎記念、ダービーGP
             東京大賞典2着、ブリーダーズGC3着
         シスターリッチ(1998牝黒鹿コマンダーインチーフ)3戦0勝
         馬名未定(1999牝鹿マーベラスサンデー)
         馬名未定(2000牝鹿マヤノトップガン)
      シスタースルー(1992牝鹿スルーザドラゴン)
      オースミサンデー(1994牡青鹿サンデーサイレンス)
             中央5戦2勝   弥生賞2着
      マキシムトライ(1995牡栗サンデーサイレンス)
             中央16戦0勝、東海,23戦1勝 種牡馬
      イブキガバメント(1996牡鹿コマンダーインチーフ)
             現役30戦7勝 朝日チャレンジC 京阪杯3着
      カネツフルーヴ(1997牡黒鹿パラダイスクリーク)
         現役15戦4勝 スプリングS3着
      リブロードキャスト(1998牡黒鹿ブライアンズタイム
             現役3戦0勝
      スウェアトゥゴッド(1999牡栗ブライアンズタイム)
             現役0戦0勝
      馬名未定(2000牝鹿ダンシングブレーヴ)
   リニア(1987牡鹿ミシシツピアン)南関東26戦7勝
   ルビーブライト(1988牝栗ミシシツピアン)南関東23戦1
   レッツチャレンジ(1989牡鹿ターゴワイス)
           中央1戦0勝 種牡馬
   デントロビウム(1991牝鹿ミルジヨージ)南関東35戦11勝
   メロウブーケ(1992牝芦オグリキャップ)南関東6戦1勝
   タカノスーパー(1994牡鹿ナスルエルアラブ)南関3戦1勝
   テーケージャンボ(1995牡鹿スマコバクリーク)
           南関東22戦7勝
   テーケーレディー(1996牝栗スマコバクリーク)
           南関東24戦3勝 東京3歳優駿牝馬
 福島幸三郎厩舎にはロジータが居た馬房がそのままになっている。天井まで張り巡らされたゴム板。天井まで蹴り上げたこともあった。カン性の強さもまた半端じゃない。長らく川崎のレコードホルダーだった母譲りのスピードの一方で激しさも備えていた。その後その馬房には弟妹たちが入ることが多かったが、蹴り上げる強さと成績が不思議と比例した。
 あれだけの激戦を制しながら脚元がモヤモヤしたことも、飼い葉を食べずヒヤヒヤしたことも、一度足りとなかったという。「血を繋げたい」という関係者たちの想いによって母となる日は早くやってきた。
 初仔のシスターソノを産んだときには予定日より24日も遅れて周りをヒヤリとさせた。その生まれた仔がさらに母となりレギュラーメンバーを産む。ロジータが駆け抜けた川崎記念を勝ち、第一回JBCクラシック馬に輝いて祖母としての最高の栄誉をロジータにもたらすのである

 サンデーサイレンスとの夢の配合だったオースミサンデーはターフの露となった。そしてついにイブキガバメントが朝日チャレンジカップを優勝して待望の初重賞を母としてのロジータにプレゼントした。
 「この一族は走る一方でとまり(受胎)の悪い傾向にあります。それでもロジータは毎年のように良駒を出すのですからたいしたものです。今はお腹の中にサンデーサイレンスの仔を宿しています。面倒見のいい母親になっているようです。レギュラーメンバーはロジータとは体型もまったく違ったタイプですが、顔付きがよく似ています。イブキガバメント、この馬はからだ付きからしてもロジータに一番似ていると思いますよ」。ロジータの育ての親である福島幸三郎調教師は語るが、今となってはロジータの勝った川崎記念で息子のイブキガバメントと孫のレギュラーメンバーが競演することも遠い夢ではなくなっている。
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