川崎競馬厩舎訪問 〜小向トレセンにようこそ〜 2015/2 山崎裕也厩舎


◇この記事は川崎競馬馬主協会ニュース 2015年2月号に掲載されたものです◇



2014年秋に開業した山崎裕也調教師。
川崎では一番新しく誕生した厩舎だが、父は同じ川崎で調教師として活躍する山崎尋美調教師。 祖父は故・山崎三郎調教師。母方の祖父もまた故・滝沢久夫調教師という、いわば川崎競馬のサラブレッド。 3歳下の弟は川崎のトップジョッキーとなった山崎誠士騎手である。
「馬がいるのが当たり前の環境で育ったし、学校に行けば厩舎の子だと言われる。周りが期待しているのはわかっていたけど、それが嫌でしょうがなかった。 それでも親が勧めるまま中央と地方の騎手試験を受けたが視力が悪かったこともあって不合格。目標がないまま進学した高校も途中で辞めてしまった」 と三代目の長男にかかるプレッシャーは大きなものだった。

17歳から社台ファームで3年間研修を積んだが、その後は札幌でバーテンとして夜の仕事をしていた。 その時、転機が訪れた。弟の誠士騎手がデビューする記事を読んだのがきっかけだった。
「紹介記事を見たら、『兄が騎手にならなかったので自分が騎手を目指した』と書かれていてショックでした。これではいけないと馬の仕事をすることを決意しました」 と家業に就くことを決め23歳で川崎に戻った。
父の元で厩務員をしながら興味のあった海外の競馬も経験。フランスのトニー・クラウト厩舎、アンドレ・ファーブル厩舎、 アイルランドのエイダン・オブライアン厩舎で修業し、ファーブル厩舎ではハリケーンランが凱旋門賞を勝つ瞬間に立ち合うこともできた。  
28歳で調教師補佐へ転向して父の右腕となってきたが、昨年調教師免許を取得。10月から山崎裕也厩舎をスタートさせている。  
もっか3人のスタッフと共に10馬房を管理しているが、「古き良き知恵を大切にしながら新しいアイデアを取り入れて馬づくりをしていくこと」が厩舎のモットー。
「入厩したら馬体をオーバーホールすることから始めます。悪い箇所をケアしながら、馬によっては筋肉や脂肪を増やして内蔵を大きくした方が良い場合もあります」 とまずは馬体改善から。山崎裕也厩舎に来てから30キロ増量した馬もいるという。
「厩舎作業が終わると毎日スタッフとミーティング。 そこで細かく各馬の状況を報告しあって情報を共有し、できるだけ馬にデメリットのない調教ができるよう翌日のメニューを決めていきます。 メニューは全馬違いますね」と開催前には夜カイバの時間になるまで熱く語りあうこともある。
ウォーミングアップには馬場内の角馬場を使うなど既存の観念にとらわれることなく限られた小向の厩舎施設をフル活用。 また、フラットコースだけで調整しきれない馬は千葉の坂路施設を併用して調教することもあるという。
「どんな馬でも勝てるように仕上げたい」と奮闘する新風。 生粋の厩舎育ちでありながら少し回り道をしてたどり着いた競馬の世界。祖父の代から続くホースマンの血が騒ぎ出している。

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